「何でもいい」筈がない!~欲求の食い違い~

くれたけ心理相談室大阪支部 心理カウンセラーの宇野謙一です。

ご訪問いただき、ありがとうございます。

 

子供の頃、父とたまたま立ち寄った書店で「好きな本を買ってやる」と言われました。

何の本にしようかなとあれこれ目移りしながら考えていると、痺れを切らした父に「さっさと決められないなら、もう買ってやらん」と言われ、結局何も買ってもらえませんでした。

「どうせなら良い本を、と思って迷ってたのに、せっかちだな」と思いました。

 

仕事から帰ると、当時の妻が「今日は外で食事しない?」と言いました。

「どこにする?」と聞くと「どこでもいい。う~ちゃん(妻は私をそう呼んでいました)の好きなところでいい」

そこで、近所の中華料理店に連れて行くと、帰ってから、「私なら、ああいう店には行かないな」と言われました。

「どこでもいいって言ったくせに…。なら最初から自分で店決めろよ!」と思いました。

 

書店での件は、私と父との間で、「どうせ買ってもらうなら、良い本をじっくり選びたい」「どの本にするか早く決めてほしい」

外食の件は、私と妻との間で、「どこでもいいと言うなら、自分は中華料理店がいい」「特に希望はないけど、こういう店はちょっと…」

という「本を買う」「外食する」ことに対する欲求の食い違いがあったようです。

 

「晩御飯、何がいい?」「何でもいい」

「デート、どこに行く?」「どこでもいい」

本当に「何でもいい」のでしょうか?

本当に「どこでもいい」のでしょうか?

 

「○○が食べたい」「××に行きたい」と明確に答えるのとは違って、少し複雑な気持ち(欲求)があるような気がします。

「晩御飯、何がいい?」⇒「晩御飯、(考えるのが面倒だから)何がいい?」「晩御飯、(相手に合わせたいから)何がいい?」「晩御飯、(作ってから文句を言われるのが面倒だから)何がいい?」

「何でもいい」⇒「(考えるのが面倒だから)何でもいい」「(相手に合わせたいから)何でもいい」「(どうせ言ってもそうならないから)何でもいい」

「デート、どこに行く?」⇒「デート、(考えるのが面倒だから)どこに行く?」「デート、(相手に合わせたいから)どこに行く?」「デート、(指定したところが気に入らなかったら嫌だから)どこに行く?」

「どこでもいい」⇒「(考えるのが面倒だから)どこでもいい」「(相手に合わせたいから)どこでもいい」「(指定したところが気に入らなかったら嫌だから)どこでもいい」

短い会話の中にも、「自分で考えたくない(相手に決めてほしい)」「相手に合わせたい(相手の気持ちを尊重したい)」「決めたことを相手に拒絶されたくない」という欲求があると思います。

ここで、問いかける側と答える側の欲求の組み合わせがうまくいかない(食い違う)時に、結果として、「また、このおかず?」「今日は、映画の気分じゃない」というようなことになるのでしょう。

「何でもいい」筈などない、ということではないでしょうか。

 

「本を買う」のも、「外食する」のも、「何でもいい」と思っていないからこそ、どの本がいいか迷ったり、帰ってから「私なら、ああいう店には行かないな」という言葉が出たりするのでしょう。

「晩御飯のメニュー」も、「デートの行き先」も、相手の気持ちを尊重したかったり自分の提案を拒絶されたくなかったりするから言わないだけで、自分の「これ(ここ)がいい」はきっとある筈。

そこを大切にして、食い違う欲求をうまく寄せたり、欲求の組み合わせがうまくいくようにできれば、お互いの理解はもっと深まっていきそうな気がします。

 

お楽しみ様でした。

「何でもいい」のは、考えるのが面倒だから?相手に合わせたいから?言っても希望通りにならないから?あなたの「これがいい」はきっとありますよね。

投稿者プロフィール

宇野謙一カウンセラー
宇野 謙一くれたけ心理相談室(大阪支部)心理カウンセラー
くれたけ心理相談室(大阪支部)は、大阪府大阪市・八尾市を拠点に心理カウンセリングを承っております。エリア外の皆様にも、Zoomや電話等によるカウンセリングにて対応させていただいております。

カウンセリングを通じて、「困っていた問題」 が 「新たな気づきや成長へのきっかけ」となることを心から願っています。

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