友情に涙する~気持ちの向き~
くれたけ心理相談室大阪支部 心理カウンセラーの宇野謙一です。
ご訪問いただき、ありがとうございます。
今から四十年前、高校2年の夏休み。
ある日の午後、同じクラスの○○さんから珍しく電話がありました。
用件は、「●●さん(私と同じ、クラスの学芸委員)が、今、病気で、通院などのため、委員の仕事(2学期早々から文化祭の準備)が十分にできない。私達も協力するから、その点、分かってあげてほしい」というものでした。
そういう事情なら無理ないよね、と快く承知しましたし、友達のためにわざわざ私に電話で理解を求めてくる優しさ、友情に人知れず涙する思いでした。
しかし…
今にして思えば、あの時の私は、○○さんの話をどんな気持ちで受け入れたのでしょう?
「●●さんが病気で、通院などのため、委員の仕事が十分にできない」ことを、そういう事情なら無理もないと思ったのは事実です。
「私達も協力するから、その点、分かってあげてほしい」という○○さんの気持ちが嬉しく、その優しさに胸を打たれのも事実です。
でも、それだけではなかった筈です。
その時の私の心の中では、「●●さんの心配」や「自分が中心となって文化際の準備を進めること」より、「物分かりのいい人間であること」「相手の事情も考えない冷たい人間だと思われないこと」というモノサシの方が強かったようです。
正確なやり取りは覚えていませんが、少なくとも、「●●さんの体調の心配」や「●●さんだけではなく、自分のことも気遣い、こうして電話をくれる○○さんの、クラスメイトを思う優しさ」に言及しなかったことだけは確かです。
これでは、○○さんのような純粋なクラスメイトへの情だとはとても言えません。
私は一体、どこを向いて○○さんの話を聞いていたのか?ということです。
人の話を、気持ちをどこに向けて聞くかで、聞いた側の対応や話す側の受け止めは違ってくる筈です。
親子でも夫婦でも友人でも、相手の悩みを聞いて真剣に向き合い、共に考えるでしょう。
その時、確かに相手のことを思う気持ちはある筈です。
但し、その気持ちに自分自身の気持ちが少しでも入ると(誰にでも主観があるため、まずそうなるでしょう)、相手のアンテナにそれをキャッチされてしまい、傷つけてしまう恐れがあると思います。
たとえば、親が子供に「あなたのお行儀が悪いと恥ずかしい」、上司が部下に「君たちの成績が悪いと私が上に怒られる」
これでは、「子供の行儀」や「部下の成績」を真剣に考えているとしても、「恥ずかしい思いをしたくない」「上に怒られたくない」が先に立ち、相手に「結局、大事なのは自分か」と思われてしまうでしょう。
カウンセラーも同じです。
上手にカウンセリングできるようになればクライエント様のためにはなりますが、「上手にカウンセリングをしたい」という気持ちが、クライエント様のために、ではなく、自分がクライエント様の前でちゃんとできるために上手くなりたい、では、結局自分のためで、そういう気持ちではダメだと思うのです。
今から四十年前、高校2年生の私も、本当にクラスメイトのことにきちんと気持ちが向いていたのでしょうか?
「物分かりのいい人間だと思われたい」「冷たい人間だと思われたくない」という気持ちが少しでもあったのなら、「結局、大事なのは自分」と言われても仕方がない。
今更悔やんでもどうしようもないことを、振り返って反省している自分がいます。
相手のためには100%純粋でなければ不純だ、とすると厳しい自己否定になりかねませんが、その気持ちを忘れず、自分ができることをやっていこうと思います。
お楽しみ様でした。

相手のことを思う気持ちに自分自身の気持ちが少しでも入ると、相手のアンテナにそれをキャッチされてしまい、傷つけてしまう恐れがあると思います。
投稿者プロフィール

- くれたけ心理相談室(大阪支部)心理カウンセラー
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カウンセリングを通じて、「困っていた問題」 が 「新たな気づきや成長へのきっかけ」となることを心から願っています。
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