「戦争を知らない子供たち」の思い~争いが残す傷と絆~

くれたけ心理相談室大阪支部 心理カウンセラーの宇野謙一です。

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ラジオから流れる昭和天皇の声(玉音放送)に国民が涙したり安堵したりしたあの日から80年が経ちました。

いわゆる「戦争を知らない子供たち」の一人である私には、その涙や安堵の本当の意味など分かる筈もありませんし、あれこれ理屈を並べて分かったつもりでいるのはあまりにも失礼というもの。

ただ、私の世代は、親が戦争を体験(我が家の場合、父は疎開、母は空襲)していますから、子供の頃に度々話には聞かされていました。

母には「あの頃の物のない大変さを知っているから、今の人達も、贅沢したり物を粗末にしてはいけないと思う」と言われていました。

逆に父には、「食べ物がなくてカボチャばかりの毎日だったから、その所為で今はカボチャは大嫌い。食べたくないし見たくもない」と聞かされました。今にして思えば、父が口が奢っていて食事にうるさかったのは、戦争を体験した反動だったのかもしれないような気がします。今頃気づいても遅過ぎますが。

テレビでも、今より頻繁に戦争をテーマにしたドラマ(「ガラスのうさぎ」や「岸壁の母」などが印象深かったです)を放送しており、子供心に「戦争は絶対に嫌だ」「兵隊には行きたくない」と思っていました。

高校の社会科の時間、「戦争が起きて徴兵検査があったらどうするか?」というアンケートに「徴兵を忌避してどこかに隠れる」と書いたくらいです。

 

私自身、劇団にいた頃、毎年この時期には「被爆の証言」を上演し、実際に被爆された方々の話を聞いたり(いくら話しても足りない思いで「もっとすごい話しようか?」と言われる方もおられました)、劇中で被爆し、助けを求めて逃げ回ったり、玉音放送に涙したり(あの時の涙の意味は何だったのか?敗戦の無念?戦争が終わったという安堵?何のために苦しまなければならず、これからも苦しまねばならないのか、という虚無感?それは演じた私自身にも定かではありません)、自分なりにいろいろと感じるところはありました。

 

「戦争を知らない子供たち」の一人である私には、分からないところも多いですが、実際に見聞きした限りでは、母に贅沢(と言うより、楽しみを持つこと)を、父にカボチャを嫌いにさせ、恐らく子供の頃に食が貧しかった影響で父の口を必要以上に奢らせ、その所為で食事のことで夫婦喧嘩が絶えず(見ている私と妹も随分嫌な思いをしました)、いくら話しても足りないという被爆者の方の思いに接しており、私のそんな見聞など取るに足りないことかもしれませんが、それだけでも、身近なところに戦争の傷跡が残っていると言えると思います。ある意味、教科書で学んだり、学校の図書館で「はだしのゲン」を読んだり、修学旅行で原爆ドームを見た時よりも、強烈な気づきではなかったかと…。

「ガラスのうさぎ」や「岸壁の母」では戦争というつらい時代の前後で紡がれる人間の強い絆というものをひしひしと感じました。

特に「岸壁の母」は、今の若い方は同名の曲を知らない方もおられるかもしれませんが、歌詞にもあるように「もしやもしやにひかされて」、心のどこかで、戦死して帰って来ないものと分かっていて、それでも思いきれずに引揚船が港に入ってくる度に、息子を探しに来てしまう母心。「港の名前は舞鶴なのに、なぜ飛んで来てはくれんのじゃ」という台詞は、今、生で聞いたら泣いてしまうかもしれません。

子供の頃は、「戦争で生き別れた親子の涙の再会」をテレビでよく観ましたし、今も時折、戦争に運命を変えられた人々の物語が様々な形で取り上げられるように、多かれ少なかれ、戦争は、人の心を傷つけ絆を育むもののように私には思えます。

 

今も、世界の至る所で人間同士の愚かで悲しい争いが起きています。

価値観の相違、領土への欲望、宗教上の問題、外交不和など、原因は様々だと思いますが、その根本には、「自国ファースト」というモノサシがあり、自分と合わない(もしくは自分に従わない)他者を認めない。地球規模で相互理解の欠乏状態にあるのではないか。そういう気が私にはします。

 

世界がこのような状況で、いつまで、仕事だの心理カウンセラーだのカウンセリングだのと言っていられるか?本当にやるべきことは他にあるのではないか?それをいつも考えてしまいます。

とは言え、今は、それぞれが自分の目の前のことに全力をつくすのみで、私自身、自分ができることを精一杯行い、伝えられるだけのことを伝えたい。そう思っています。

 

いつか、全ての大人が「戦争を知らない子供たち」だった。そして、その大人たちが戦争など考えもしない。そういう日が来ることを心から願っています。

「戦争を知らない子供たち」の一人である私には、分からないところも多いですし、あれこれ理屈を並べて分かったつもりでいるのはあまりにも失礼だと思いますが、実際に見聞きした、戦争を体験した影響による両親それぞれの姿勢や、いくら話しても足りないという被爆者の方の思い。更には、テレビで取り上げられる様々な物語などから、多かれ少なかれ、戦争は、人の心を傷つけ絆を育むもののように私には思えます。いつか、全ての大人が「戦争を知らない子供たち」だった。そして、その大人たちが戦争など考えもしない。そういう日が来ることを心から願っています。

投稿者プロフィール

宇野謙一カウンセラー
宇野 謙一くれたけ心理相談室(大阪支部)心理カウンセラー
くれたけ心理相談室(大阪支部)は、大阪府大阪市・八尾市を拠点に心理カウンセリングを承っております。エリア外の皆様にも、Zoomや電話等によるカウンセリングにて対応させていただいております。

カウンセリングを通じて、「困っていた問題」 が 「新たな気づきや成長へのきっかけ」となることを心から願っています。

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