悲劇から学ぶ~心の中に悲しみの居場所を~
くれたけ心理相談室大阪支部 心理カウンセラーの宇野謙一です。
ご訪問いただき、ありがとうございます。
あの痛ましい「御巣鷹山の悲劇」。「日航機墜落事故」からもう四十年経ったのですね。
当時、私は高校2年生。大変な事故が起きたものだと、いたたまれない思いで次々と報道されるニュースを見ていました。
歌手の坂本九さんや阪神タイガース球団社長の中埜肇氏をはじめ、多くの方々が亡くなられたことに対する悲しさと、あれだけの大事故の中で四名の方の命が助かったことへの喜び。そして、その四名の方々が今後の人生をしっかりと生きてほしいという願い。こうした様々な思いが交差していました。
人間というのは不思議なもので、自分自身が事故の当事者でなかったり、家族が事故に巻き込まれた訳でもないのに、誰かの悲しみを自分のものとしても考え、感情移入し、思いめぐらすことができるのですね。
あの事故から何年経とうが、直接の関係者でなくても、自身の悲しみとして深く心に刻み込んでいる多くの方がおられることと思います。
昨日のネット記事で遺族の方が語られていた中で、全ての悲劇に通じ、カウンセラーとしてもクライエント様にこう語り掛けたいものだと感じた言葉がありました。
「悲しみを乗り越えようとするのではなく、心の中に悲しみの居場所をつくろう」
この言葉を言われた方は、当時九歳の息子さんを大阪の親戚を訪ねるために一人で飛行機に乗せたために死なせてしまったと当初自分を責め続けたそうです。
しかし、当日息子さんの隣の席だった女性の遺族の方と電話で話すことで「息子は一人じゃなかった」と感じることができ、この心境に至ったといいます。
一つの考え方として、悲しみは簡単に乗り越えたり忘れたりできないものではないかということが言えると思います。
特に、(殆どがそうかもしれませんが)大切に思う人がそこに関係していたら尚更で、乗り越える以前に、忘れてはならないのではないでしょうか。
恐らく、亡くなった息子さんも、母親が悲しみを乗り越えて前向きに生きていくことは望んでも、自身の存在、失った悲しみを心のどこにも留めないのは本意ではない。そんな気がします。
「日航機墜落事故」とは次元が違う話ですが、私も三十年前、大切な人を失っています。
亡くなったということではなく、手の届かないところに行ってしまったという意味でですが。
そのことに対する私の心の有り様が、正しく「悲しみを乗り越えようとするのではなく、心の中に悲しみの居場所をつくろう」だったと今回気づきました。
その大切な人を失ったのは、絆を紡ごうと何度も差し伸べてくれた手を一度も握らなかったからですが、そのことで相手を傷つけたという事実は忘れられるものではないし、忘れていいことではないと思っています。
もちろん、傷つけた相手のことは、一日たりとも忘れたことはなく、忘れたらバチが当たるとすら思っています。
自分勝手な理屈や自己本位な成長で「悲しみを乗り越えようとする」のではなく、相手を傷つけた事実も相手のことも「心の中に居場所をつくる」。そして、一日たりとも忘れずにいる。
自己満足かもしれませんが、これが自分なりの反省の仕方であり、悲しみへの向き合い方です。
「悲しみを乗り越えようとするのではなく、心の中に悲しみの居場所をつくろう」
乗り越えるために無理なエネルギーを使って精神疲労を悪化させるより、居場所をつくってじっくり向き合っていく。無理に忘れようとせず、心に留めていつでも振り返れる姿勢でいること。
今回、遺族の方のお話から、そういったことを学んだような気がします。
あの痛ましい事故で亡くなられた方々のご冥福を改めて心からお祈りいたします。

「悲しみを乗り越えようとするのではなく、心の中に悲しみの居場所をつくろう」。一つの考え方として、悲しみは簡単に乗り越えたり忘れたりできないものではないかということが言えると思います。乗り越えるために無理なエネルギーを使って精神疲労を悪化させるより、居場所をつくってじっくり向き合っていく。無理に忘れようとせず、心に留めていつでも振り返れる姿勢でいること。四十年前の悲劇から、そういったことを学んだような気がします。
投稿者プロフィール

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