気楽な多忙~便利の弊害~
くれたけ心理相談室大阪支部 心理カウンセラーの宇野謙一です。
ご訪問いただき、ありがとうございます。
高校生の頃、放送部で制作したラジオドラマが、あるラジオ局の「高校生の作品を1日1本流す」番組で流れたことがあります。
タイトルは、「気楽な多忙~忙しさ、お安く体感~」
原作・監督・主演、全て私です(主演に関しては、誰もやりたがらなかったので仕方なく、ですが)。
簡単に言えば、浦島太郎のパロディで、その物語(のんびり暮らしていた猟師が忙しい毎日を送る羽目になる)自体が、「機械やロボットの発達で暇を持て余した人間に多忙を体感させる」という病院の治療プログラムだったというもの。
ラスト、「前置きが長かった」と感想を述べる患者に医者が「では、次は『おしん』にしましょう」とまで言っています(というか、私<作者>が言わせたのですが)。
もう四十年も前に制作したものですが、当時何となくの思い付きだった「機械やロボットの発達で暇を持て余した人間」が、形を変えて現実のものになっていることに恐ろしさを感じます。
あらゆることを便利にしようと取り組んでいるうちは、そのためにやることや苦労が多いものですが、いざ目的を達成してみると、脱力感や余剰人員、ことによっては仕組みの悪用といった問題が生じることで「便利なのに不便」という矛盾した状況になることも有り得ます。
たとえば、セルフレジ。
お客様自身で商品のスキャンから会計まで全てできるということは、人の目を盗んで不正もできるということ。
酒飲みの立場から言えば、酒類の販売につきものの年齢確認のため、購入する商品に酒類が混じっている場合は、セルフレジは使えず、有人レジに行くなり店の人を呼ぶなりしなければなりません。
お客様にとっても、店側にとっても、「便利なのに不便」ですね。
セルフレジに限りませんが、同じ機械や仕組みでも、人によって、便利か不便か、感じ方や対応が異なります。
いつの間にか、どの職場も「パソコン一人に1台」が当たり前になって、事務も随分簡略化されています。
その分、手が足り過ぎると、四十年前の高校生が作ったラジオドラマのようなことが起こり得る訳です。
便利の弊害は、「便利なのに不便」だけではありません。
たとえば、メールやLINEの普及で、連絡が便利になったかと思いきや、手書きの温もりが薄れゆく、対面での意思疎通が困難な人が増える、という笑えない現実があります。
たとえば、便利な時代しか知らない人に、そうでなかった時代の苦労は分からない。「苦労を知らない」「我慢を知らない」「有難みが分からない」という人として些か心配な現実もあるでしょう。
確かに、私などは、「あの頃、メールやLINEがあれば、あの恋を逃さなかったのに…」と思うことがありますが、相手の気持ちを知るために、自分の気持ちを伝えるために、手紙を書いたり、あの手この手で対面での意思疎通を図ったり、そうしたことが自身の学びにもなりますし、今でも当時を振り返り。ああすればよかった、こう言えばよかったと、セルフ・カウンセリングを欠かしません。
メールやLINEで、楽にデートの約束を取り付けるより、彼女の家に「本人が出てくれ(特にお父さんが出ませんように)」とビクビクしながら電話し、彼女は彼女で、電話の後で「今の男の人、誰?」と家族に問い詰められる。その経験が、二人を一回りも二回りも大きくし、愛も深まる。そんな気がします。
便利になるのもいいですが、不便や苦難を乗り越え、温もりや情緒に囲まれ、気持ちにハリのある生活の良さも捨てがたい。
不便や苦難を乗り越える強さ。温もりや情緒を感じられる心。
人は、それを失ってはいけないと思います。
「気楽な多忙」は、物語の中だけのものであってほしいですね。
お楽しみ様でした。

同じ機械や仕組みでも、人によって、便利か不便か、感じ方や対応が異なります。それに、「気楽な多忙」は、物語の中だけのものであってほしいですね。
投稿者プロフィール

- くれたけ心理相談室(大阪支部)心理カウンセラー
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